導入
『チーズはどこへ消えた?』という本を読んだことがありますか?
シンプルで短い物語なのに、人生の変化や選択について大切なことを教えてくれると、多くの人に支持されている一冊です。
「変化に対応しよう」「チーズ(=成功や安心)を探しに行こう」――そうした前向きなメッセージを受け取った人も多いと思います。
けれど、正直に言うと、自分はこの本を読みながら、少しだけ違和感を覚えました。
変化を恐れず進むことは大事。でも、それだけでいいのか? チーズを探しに行かない選択は、本当に間違いなのか?
そんなふうに、自分なりに引っかかった部分がありました。
今回は、この本を通して考えた、自分なりの視点を整理しながら書いてみようと思います。
多くの人の感想とは少し違うかもしれませんが、だからこそ意味のある視点になればと思っています。
🧀 あらすじ(読み飛ばしたい方は目次からスキップできます)
『チーズはどこへ消えた?』は、ネズミと小人の4人が「迷路」の中で「チーズ」を探す話。
このチーズは、人生の中で手に入れたいもの――たとえば成功、愛情、安心――を象徴していて、迷路はそれを探し続ける人生そのもの。
登場人物はこの4人:
- スニッフ:変化をすばやく嗅ぎ取るネズミ
- スカリー:深く考えず、行動で対応するネズミ
- ホー:最初は恐れて動けなかったが、やがて前に進む小人
- ヘム:変化を拒み、「チーズは戻ってくる」と言い張る小人
4人は毎日、決まった場所「チーズステーションC」でチーズを手に入れていた。
ところが、ある日チーズがすべて消えてしまう。
ネズミたちは迷わず、新しいチーズを探しに出発。
小人のホーとヘムは「なぜ?戻ってくるのでは?」と混乱し、その場にとどまる。
ホーはやがて思い直し、恐怖を感じながらも新たなチーズを探す旅へ。
壁に「変化は起きる」「古いチーズにしがみつくな」など、気づきをメモしながら進む。
そして最後、ホーは新たなチーズのある場所にたどり着く。
そこには、すでにスニッフとスカリーの姿があった。
ホーは「いつかヘムも来るかもしれない」と、そっと願いを込める。
この本が伝えようとしていること
『チーズはどこへ消えた?』が伝えたいメッセージは、変化にどう向き合うかということに集約される。
物語に出てくる「チーズ」は、私たちが日常で求めているもの――たとえば仕事、恋愛、成功、安心、自由などの象徴。
そして「迷路」は、それらを探し求める人生の過程や社会のしくみを表している。
登場人物の中でも、スニッフやスカリーのように変化にすぐ気づいて行動するタイプもいれば、
ヘムのように変化を拒んで現状にとどまるタイプもいる。
その違いの中で物語が示しているのは、
「変化は必ず起こる。大切なのは、それに気づき、できるだけ早く行動に移すこと」
ということ。
この本では、恐れや迷いにとらわれず、変化を受け入れ、新しい環境に適応することが必要だと繰り返し伝えられている。
ホーが少しずつ迷路を進んでいく過程で「気づき」を得ていく描写は、まさにその象徴。
たとえば、彼が壁に残していく言葉――
「変化に備えよう」「古いチーズにしがみつくな」「恐れていることをやろう」
こうしたメッセージは、変化を前向きにとらえ、恐れずに一歩を踏み出すことの大切さを教えてくれる。
自分なりに考えた『チーズはどこへ消えた?』
『チーズはどこへ消えた?』は、「変化を恐れず前に進め」と語る本として広く知られています。
実際、変化に気づき、行動を起こすことの大切さは、物語の中で明確に描かれており、自分もそれに共感する部分はありました。
けれど正直なところ、「だからといって、すべての場面で変化を求めるべきなのか?」という疑問も感じました。
変化そのものよりも、「判断」と「覚悟」の大切さ
自分がこの本を読んで一番強く感じたのは、変化するかどうかという“結果”ではなく、「どう判断し、どう信じて進むか」という“姿勢”こそが大切ではないかという点です。
登場人物のヘムが、「チーズはまた戻ってくるのではないか」と信じて動かなかった姿に対しても、完全に否定することはできませんでした。
実際の人生においても、「変わらない」ことが必ずしも悪とは限らず、状況によっては“じっと待つ”ことが良い方向につながる可能性もあると感じるからです。
とはいえ、自分はヘムの態度を無条件で擁護しているわけではありません。
ヘムのように、すぐには動けない心理には共感する部分もありますが、もし彼が「もうチーズは戻ってこない」と分かっていながら、恐怖で動けなかったのだとしたら、それはやはり間違っていると思います。
重要なのは、変化する/しないという“選択肢の是非”を、状況に応じて冷静に判断すること。
そして、判断が難しいとき――つまり、どちらの選択にもメリット・デメリットがあり、未来になってみないと結果が分からないとき――には、「選んだあとに、その選択を正解にしていく行動」が大切なのではないかということです。
いちばん問題だったのは、“行動の遅れ”
物語の中で最も問題だと感じたのは、「変わるか/変わらないか」という結果ではありませんでした。
むしろ、「どちらに進むのか」を決められないまま、迷い続けて時間だけが過ぎていくこと。これが一番もったいないと感じました。
チーズは戻ってくるかもしれないし、戻ってこないかもしれない。
探しに行っても見つかるかもしれないし、見つからないかもしれない。
だからこそ、どちらかに決めたなら――その選択を信じて前に進んでいくべきだと思います。
正解を“探す”より、“作っていく”
私たちは日々、どちらが正しいかわからない選択に直面します。
そんなとき、「本当にこれでよかったのか」と悩み続けるのではなく、
選んだ自分を信じて、その選択を“正解だった”と思えるように努力する。
それが、自分がこの本から受け取った一番のメッセージです。
もちろん、すべての選択が正当化できるとは思っていません。
判断が明らかに間違っていた場合は、再評価して軌道修正することも必要です。
でも、判断に迷うような状況では、選んだあとの行動と覚悟こそが、結果を大きく左右する。
結論:選ぶことより、「選んだ後」が人生を決める
『チーズはどこへ消えた?』は、単に「変われ」と背中を押す本ではないと、自分は思います。
本当に問いかけているのは、「あなたは何を選び、その選択をどう信じて生きていくか?」ということ。
迷って、考えて、それでも決めたなら、あとはその選択を正解にできるように、覚悟と行動を積み重ねていく。
それこそが、“変化に前向きに生きる”ということなんじゃないかと、今の自分は思っています。
まとめ:自分で選び、自分で進む
『チーズはどこへ消えた?』は、多くの人に「変化の大切さ」を伝えてきた本だと思います。
でも、自分にとってこの本は、それ以上に「自分の選択とどう向き合うか」を考えさせてくれる一冊でした。
私たちは毎日、大きなことから小さなことまで無数の選択をしています。
その中には、「変わった方がいいのか、それとも今のままでいいのか」と迷う場面も少なくありません。
そんなとき、正解を探し続けて立ち止まるのではなく、
「自分が選んだ道を、自分で正解にしていく」という覚悟が、前に進む力になるのではないかと思います。
変わるか、変わらないか――それも大事だけど、
もっと大事なのは、どちらを選んだとしても、自分で納得し、責任を持って歩き続けること。
この本を読んで感じたことを、誰かの選択や迷いのヒントとして届けられたら嬉しいです。
そしてもし、あなたにも「チーズが消えた」と感じる瞬間があるなら――
そのとき、自分はどう進みたいか、あらためて考えてみるのもいいかもしれません。